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みなさん、生前測量ってご存知ですか?

生前測量とは、相続対策や終活の一環として、自分の持っている土地の境界を確定させることを指します。境界を確定させるには、「隣地の所有者と現地で境界線を確認し、確認したポイントに杭を設置し、境界確認書という書類を2通作成し、隣地所有者と取り交わす」ことが必要不可欠です。

それって必要なの?

正直なところ、普通に暮らしている分には必要性を感じないでしょう。やるやらないはその人の自由、義務でもなんでもありません。
ですが、私は絶対にやっておくべきだと心から思っています。

ではなぜやるべきなのか? 

生前測量をやるべき3つのベネフィットをお伝えします。

1 売却(現金化)しやすくなる

土地を売却する場合、境界が確定している必要があります。
境界確定に必要な日数は、平均的に2~3カ月くらいですが、もし隣地が空き家で放置されていたらどうでしょうか?その空き家の所有者を探し出すだけで3カ月かかる場合もあります。そうなってしまうと、境界が確定するのに半年以上かかることもざらです。

ここで質問です。
相続税の納税に締め切りがあることをご存知ですか?

相続税は、被相続人が死亡してから10カ月以内に現金一括で払わないといけませんので、納税資金を確保するために土地を売らないといけない場合もあります。相続が発生した場合、普通は49日が終わってから遺産分けの話を始めるので、この時点で納税の締め切りまで8カ月ほどになってしまいます。このタイミングで境界確定作業に入った場合、隣地の所有者が見つからないと最悪です。刻々と納税のタイムリミットが近づくのは精神衛生上よくありません。

ですので、そういう事態が起きてもあわてずに済むように、元気なうちに隣との境界を確定しておくことが重要です。

2 隣との境界で揉めずに暮らせる

私は平成16年に土地家屋調査士登録をして以来、境界線をめぐって隣同士が争う姿をいくつも見てきています。わずか5センチや10センチをめぐって争う人だっています。

こういった境界争いはなぜ起こるのか?

それは、お隣との境界をきちんと決めていないからです。
昔は、隣との境界は、このブロック塀ね、この生垣ね、という感じで口約束で決めていることも多かったです。口約束であっても契約としては有効ですし、当事者が口約束で決めた境界をきちんと認識できているのであれば特に問題はありません。ですが、その口約束がお子さんに伝わらずに当事者が亡くなったらどうなるでしょうか?次第に隣との境界があやふやになり、争いに発展するのです。

ですので、将来の境界争いを防ぐためには口約束だけでとどめておかず、実際の境界点に杭を設置し、そして境界確認書を作って取り交わしておくことが大切です。

これにより、お子さんやお孫さんの代になってもご近所が仲良く平穏に暮らすことができます。

3 子供孝行できる

「一所懸命」という言葉をご存知でしょうか? 命を懸けるくらいの勢いで物事に当たるという意味で使われます。この「一所懸命」ですが、鎌倉時代の武士が将軍から頂いた領地を命がけで守ることに由来しています。

このように、日本では自分の土地を守り、それを子孫に伝えていくことが非常に重要視されています。土地を持っている人は、「先祖が命がけで守ってきた土地を、いかに子供に相続させるか」を考え、土地をめぐって兄弟が争わないように、遺言を書くなどの対策を打つわけですね。
この根底にあるのは「子供に迷惑をかけない」だと思います。せっかく子供に相続させた土地。その土地で、隣との境界争いが起きてしまったらどうなるでしょう? 境界紛争のやっかいなところは、喧嘩の相手が隣に住んでいるので毎日顔を合わせないといけないということです。

「子供に迷惑をかけない」相続を考えるなら、親の代できちんと隣との境界を確定させてから子供に相続させることが大切だと思います。
これが「子供孝行」です。

以上、生前測量をやるべき3つのベネフィットです。

生前測量は費用もそれなりにかかり、最低でも40万円、平均的には50万~80万位かかることが多いですが、それを上回るベネフィットがありますので、土地と終活の意識を持っている、元気な方は是非前向きにご検討いただけると幸いです。